哲学における「私とは何か」という問題の根本的な解決について

これは厨二病とかではなく歴史上の哲学者が(分野にもよるが)本当に悩み続けてきた話なのでそういう気分で聞いて欲しい。

「私は存在する」。

この言葉は、よくよく考えると非常に重大な問題を孕んでいる。
私が存在している。それは確かである。問題は私が存在している事を観測している私は一体誰なのかという問題である。
つまる話私が存在している事を確認できる何かが存在するはずなのである。
ではそれを踏まえて言い直そう。

「私が存在していることを観測できる誰かが存在する」。

ところが自己矛盾は解決されないままだ。
私が存在していることを観測している誰かが存在する、それを観測している何かは一体何なのだという問題だ。
もう一度言い直そう。

「私が存在していることを観測している誰かが存在していることを観測する何かが……」

以下無限ループ。
誰一人としてこの問題に打ち勝つことは叶わず、デカルトは「我思う故に我有り」という回答にすらなっていない回答を残して発狂した。学部のテストなら0点、問答無用で不可である。

ここでまず、このような解決法が考えられるだろう。

「私は自己観測できる存在である」

なるほど。
一見して問題は解消されたのかもしれない。
では話を進めよう。自己観測は具体的にどのように可能になるのであろうか。
自己観測をするからにはそのような能力が私のどこかにあるはずで、またその能力自体を観測可能にする能力も持っているはずである。
となれば、こう言い直さねばならない。

「私は自己観測できる存在であり、またその能力を観測できる能力を持っており、更にその事実全体を観測する能力が出来る」

さてこの「私は自己観測できる存在であり、またそ能力を観測できる能力を持っており、更にその事実全体を観測する能力が出来る」という事実全体を更に観測しているのは一体何の能力なのか。

同じループが始まるだけである。
無理なのだ。
どんだけ考えても答えなんて出ないのだ。
だから皆頭がおかしくなったのだ。

私はこの問題について、恐らく進化心理学のスイスアーミーナイフモデルが近い内に結論を出すだろうと考えている。また、私自身の脳のブート云々の体験からにもよる。
この問題を考えた過去の偉人達の全ての失敗は、進化心理学が時代的に未だ存在せず、それが故に、脳(あるいは、魂や心)が単一の存在であると考えているという点にある。
感情と理性が互いに違うことを考えていようが、とにかくそれを統合する唯一絶対の自我が存在するはずだという観点に立っている部分に根本的な罠が仕掛けられている。

脳のスイスアーミーナイフモデルについて語ろう。
スイスアーミーナイフモデルとは、言うまでもなくスイスアーミーナイフという実際に存在する小道具を元にしてつけられた術語であり、従ってその説明の際には、スイスアーミーナイフがどのようなものであるかを説明するほうがモデル自体を延々説明するより遥かに速いのである。
スイスアーミーナイフとは以下のようなものである。
https://iwiz-chie.c.yimg.jp/im_siggyPjfrvWYN0naMt0Kvn0a0g---x320-y320-exp5m-n1/d/iwiz-chie/que-1385066643
リンクが切れていたらググって欲しい。
とりあえず役に立つだけのものを適当に寄せ集めた、何の統合的なコンセプトもない道具群、それがスイスアーミーナイフである。
そして脳をスイスアーミーナイフのように、とりあえず生存に役に立つだけの器官を適当に寄せ集め、それが存在するのはその器官の発生・発達した際の自然淘汰による影響であり、統合的な目的など一切存在しないという立場から脳を研究するのがスイスアーミーナイフモデルである。

例えば、このような考え方をするモデルである。
ある器官──例えば感情の一つ、怒り──が何の意味もなく発生し、何の意味もなく発達を終える。
ある器官──例えば感情の一つ、喜び──が何の意味もなく発生し、それはもしかしたら、別の器官──例えば快楽や報酬系──の発達と同時期に起こっているかもしれない。
そして更に何十もの器官が発生・発達したその後で、一番最初に発生した器官である怒りが自然淘汰によってまた再び発達し始める事だって有り得るだろう。
全ては究極的には偶然の産物であり、脳というのはとにかく生き延びるための器官の寄せ集めに過ぎないと考え、それを統合するナニカなど存在しない、あるいは存在するとしても他と同等の一器官、調整役程度に過ぎないとみなすのがこのモデルの考え方である。
そして私はそれに深く同意するものである。

勿論、究極的には偶然の産物といっても、その中にある程度の必然性──時系列など──は見出すことが可能なはずである。また、当時の環境が考古学によって再現されるにつれ、どのような能力が必要だったのかもある程度は見出されるはずである。
しかしいずれにしても、究極的には寄せ集めているだけに過ぎないというのがこのモデルである。

そして意識と「私」の発生について言えば、
基本的に立場は2つあり、ぶっちゃけどっちも「全然分からん」という以上の話ではないのだが、
一つに、脳のような複雑な機械に電流を流したり、あるいは複雑な物理現象が起こるととにかくこのようなものが発生するのだという立場と、
二つに、このように複雑な器官を相互に争わせると意識が発生するのだ、という立場である。
でも両方とも何の解決にもなっていないので私はどちらの立場にも立たないことにしている。

さて。
最初の問題に戻ろう。

「私は存在する」。

この何千年も解決されなかった問題のどこに罠が仕掛けられていたのか?
それは、脳の中には自分が一つしか無いという幻想である。
実際には脳の中には自分とみなせる器官が、恐らく数えるのが容易でない程度には不可分に存在し、かつ相互に観測できるのである。
従って、ある器官私Aが別の器官私Bを観測し、同時に器官私Bが器官私Aを観測し、その情報は別の器官に送られ、情動に回されて処理され、このように今私がタイプしていると考えれば全ては解決するのである。

そしてこれは恐らく、楽観的に見れば、あと半世紀か一世紀の間にはある程度は実証されるはずである。特に、侵食問題を無視して地下で人体実験を行うサイコパスが一人現れたらそれだけで飛躍的に進むはずである。

あるいは既に私のような人物の言動が実証していると言っても良いのかもしれない。しかしその言動を信じられ、また体験できるのは世界に私一人、あるいは同じくらい脳に損壊を受けた者のみであり、また再現性も認められないため、これは実証されたというのは難しいものではあるが、いずれにしても、私はこれを既に経験している、というよりそれが私の日常なのである。
私の脳はあまりにも深刻なダメージを受けすぎた。しかし、ダメージを受けた部位、及びダメージの深さは全く一定ではなかった。
このため、私の脳はしばしば起床後や就寝前に深刻な問題を引き起こし、一部が正常に作動しているのに一部が正常に作動していないといった感覚を頻繁に経験するのである。
そして正常に作動している私は正常に作動していない私から送られてくるバグった電気信号を受信して狂いそうになっている。

私はこのような世界に慣れてしまった。
だから私は、私が一人しかいないとは思わないし、私が何人もいる世界を容易に想像することが出来る。
しかしそれは、人間の一般的な価値観とはかけ離れ、ある種のトラウマや、生理的嫌悪を引き起こすのである。
イーガンの作品を読んでゾッとする人間が多いのはそのためである。
あれらはある意味で禁書である。焚書すべきものである。読んだ人間の精神を根本的に破壊する可能性があるという点において。
あんなものを読むのは頭に異常を抱えた人間だけで良い。

さて最後の問題である。
私には意識がある。
私は今間違いなく文章をタイプしている。
私はそれを観測している。
それが一体何であるのか。

そんなものは存在しない。
それは強いて言えば複数の器官の感覚の統合であり、それがどこかしらの器官に送られて生命活動が出来るようにまとめ上げられ、それを理性という存在が観測し、単一の存在として誤解することによって引き起こされている錯覚である。
手順が多少間違っていようと、根本的に、意識は脳の中の複数の器官によってもたらされた幻想である。
我々の視覚が完全ではなく、感覚がまず知覚によって、次に知覚が認知によって捻じ曲げられ、錯視図形というものが存在できるように、
意識という完全なる単一のものが存在しているように感じられるのは、それが成果物として排出されるまでの途中の経過を見ることが出来ないが故に生じるただの錯覚である。

この事実はキリスト教圏における進化論以上に人類に甚大な試練を齎すだろう。
何故なら、日本で容易に進化論が受け入れられるがキリスト教圏では受け入れられない、そのような問題では全く無いからである。
自分の意識が一つで無かったり人工物であったりする事実を突きつけられることへの根源的恐怖や気持ち悪さは恐らく脳に埋め込まれた何かによるものであって人類共通のものである。
だからこそ日本でさえドラえもんのどこでもドア問題が数々の人間のトラウマとして焼き付いているのである。

未来の人類が進化心理学を個人として信じようが信じまいが、私はどうでも良い。
しかしそれがいつかテクノロジーと化した時、誰にも欠かせない必需品となった時──
人類は果たしてその世界に何を見るのだろう?

……恐らくは、私が一世紀先に生で見た、この景色を。

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